『マームと誰かさん・ふたりめ 飴屋法水さん(演出家)とジプシー』 @ SNAC(清澄白河)2012.6.3 「えーと」が、第一声だった。 青柳いづみの声は、「ー」と書くのがふさわしいくらい、平たく、レーザービームのように、飴屋さんのとつとつとした語りをなぎ払った。 飴屋さんは、セミが鳴き止むように、語るのをやめた。 えーと。 その日、会場であるSNACに着くと、飴屋さんが入口のコンクリートに水を撒いていた。SNACの入口には扉も窓もなく広く開け放たれていて、そこに壊れた車が突き刺さっていて、表ではビールや飲み物が配られていて、午後7時の6月は明るくて、開演にはまだ一時間もあったけれど、あ、もう始まっているな、と思った。セミの声がした。セミが鳴いてもおかしくない陽気だった。でも6月はまだ始まったばかりで、それはどうやら飴屋さんが操作するサンプラーから流れているらしかった。会場の入口から放た