福島第一原発の放射能漏れ事故をきっかけに、特にツイッター上でメディアに大量の広告を出稿する電力会社による取材圧力の有無をめぐる論争が果てしなく続いている。「ある」のか、「ない」のか。もはや神学論争的になりつつあるが、この議論に対する筆者なりの結論は「両方正しい」だ。 今から15年近く前のこと。全国紙記者として石川県に勤務していた筆者は、能登半島の先端での立地をめぐって推進派と反対派がせめぎあっていた珠洲原発の取材をしていた。原発が争点の市長選挙に高裁が「無効」の判決を出し、やり直し選挙が行われたのだが、その過程で反原発派から「電力会社がこっそり用地買収を進めている。しかも暴力団がらみで」というネタを聞き込んだ。 もし本当なら確実に1面トップの大特ダネだ。当然土地の登記簿を取ったり、予定地周辺で聞き込みをしたりとしばらく取材に動いたが、裏は取れずじまいだった。結果的にこちらの力量不足で「幻の