立木義浩氏は、1960年代から1970年代のシティ・ボーイズにとって、ヒーローであり〝アイドル〟だった。写真雑誌や週刊誌に掲載される写真世界はつねに新鮮だったし、ご当人は長身でハンサムだし、六本木に住んで、乗っているクルマといえばバンデンプラス・プリンセスやミニ・カントリーマンなのだから、「オッシャレー!」そのものを体現する存在でもあった。今回、上野の森美術館で「時代─立木義浩写真展 1959-2019─」が開かれると知り、1970年代に少年期を過ごした筆者などは掛け値なしに興奮した部類である。出世作「舌出し天使」(1965年発表)の連作はいま観ても心が浮き立つし、テレビ「探偵物語」(79-80年)撮影時の松田優作のオフカットも、その新鮮な視点に興味がつきない。 「今回の展覧会の話が来たとき、なんだか事故みたいだと思ったよ。おおがかりな美術館を舞台に写真を見せるなんて思いもかけなかったから