大勢の女兄弟に囲まれ生きてきたボールにとって、混浴──異性との入浴など、それこそ吐いて捨てるほどの経験だった。狭い自宅アパートに申し訳程度に添えられたバスルーム。どれだけやめろと言っても、聞かずに彼女らはズカズカ入りこんでくる。そのたびに彼はため息を吐く、ただでさえ狭い湯船、たまにはひとりでゆっくり入りたいものだ。 ただし今日の混浴は別だった。なにせ、ゆったり源泉掛け流しの天然温泉露天風呂ディメンション、湯気の向こうにいるのは、某公共放送の大晦日歌合戦でトリを飾るほどのあの国民的アイドルバンド『プチ・ルー』のメンバー、ノズとマーキーなのだから。もっともノズはシンプルワンピースの、マーキーはセパレートフリルの、それぞれ水着を着用してはいるけれど、 「あのさぁボール……なんか、ぜんっぜん温泉気分漫喫できないんだけどぉ」 「…………あたしらは別に、素っ裸でも構わないのに……減るモンでもなし………