「寺山修司さんへ ─1983年『弔辞』」 山田太一 寺山さん あなたは「死ぬのはいつも他人ばかり」というマルセル・デュシャンの言葉を口にしていたことがありましたが、そして、あなたの死は、私にとって、もとより他人の死であるしかないわけですが、思いがけないほどの喪失感で──あなたと一緒に、自分の中の一部が欠け落ちてしまったような淋しさの中にいます。 あなたとは大学の同級生でした。 一年の時、あなたが声をかけてくれて、知り合いました。大学時代は、ほとんどあなたとの思い出しかないようにさえ思います。 手紙をよく書き合いました。逢っているのに書いたのでした。さんざんしゃべって、別れて自分のアパートへ帰ると、また話したくなり、電話のない頃だったので、せっせと手紙を書き、翌日逢うと、お互いの手紙を読んでから、話しはじめるというようなことをしました。 それから二人とも大人というものになり