私は大学、大学院、そして研究員となった現在も、音楽を対象とした研究をしてきました。初対面の人にこの話をすると「あなたも何か楽器は演奏されるのですか?」「音楽はご趣味で?」…という話が続きます。確かに私はピアノを弾きますし、音楽も趣味だと思いますが、研究者になろうと思ったのは―少なくともはじめの段階では―「音楽が好きだから」という理由からではありませんでした。 私の専門は心理学で、学部1年生のときに必修科目の「心理学測定」という実験実習科目がありました。その中に、私が研究者を志そうと思った、ある実験がありました。心理学の基礎実験としてはオーソドックスなものです。片手には一定の重さのおもりを持ち、もう一方の手には違う重さのおもりを持って、「どちらが重いか」を判断する実験です。実に地味でつまらない実験に思えます。実際、実験をやっているときまではそうでした。しかし、この実験の結果を集計して、「2つ
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