(Vol.26 p 264-265) はじめに 事件は、2003(平成15)年4月30日(水)に市民病院から健康福祉事務所(保健所)への「急性ウイルス性肝炎患者が複数受診し、そのうち3名が入院、原因食としてシカ肉が疑われる」との通報により探知された。生食したシカ肉が原因と推測されたことから、担当医に患者の情報提供を求めた。血液検査では好酸球の増多は認められなかったため寄生虫感染は否定された。肝機能検査では、いずれの患者もトランスアミナーゼ(GOT)活性が発症後に急上昇して数日でピークを示し、数日で正常値に復した。このためウイルス性肝炎の発症が疑われたが、検査ではA型、B型、C型肝炎は否定された。 疫学調査 2003年2月および4月に入手した2頭のシカ肉を5家族8名が喫食しており、このうち4名(4家族)が4月16日~27日にかけて肝炎を発症し、患者はこれら両個体(M1およびM2)から切り分け