☆抗生物質の危機(2) ~魔法の終わる時~ ペニシリンをはじめとする抗生物質が感染症の治療に革命を起こし、長いこと人類を苦しめてきた疫病の数々が影を潜めた--というところまでを前回お話しました。しかし人類が安心したのも束の間、細菌は素早く逆襲を開始しました。抗生物質の効かない「耐性菌」が出現してきたのです。 ペニシリン以前から用いられていた化学療法剤として、サルファ剤があります。このサルファ剤は終戦直後の日本で赤痢が流行した際、有効な治療薬としてあちこちで多用されました。ところがしばらくしてサルファ剤の効かない赤痢菌が出現し始め、1950年頃にはもはや赤痢菌の80%がサルファ剤耐性菌となってしまったのです。他の病原菌でも事態は同様で、現在では医療の現場でサルファ剤が使われることはほとんどありません。 この赤痢の流行はストレプトマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリンといった抗生物質