「東京暮色」の長女役・原節子(左)と次女役の有馬稲子この記事の写真をすべて見る 「東京暮色」に出た時は、小津さんが偉い方だとは知らなかったんですよ。 【フォトギャラリー】「東京暮色」など、小津安二郎監督7作品の魅力を写真で紹介 でも撮影中にすごいものを見ちゃいました。原節子さんが首の向きを横にするシーンがあったんですけど、うまくいかないと言って15回くらい撮り直したんです。 原さんでもあれだけやられるのだから、私だったらどうなるの、と怖くなって。でも山田五十鈴さんとのケンカのシーンは一発でできましたし、なぜか絞られなかったんです。 小津さんにはよく食事に誘っていただきました。「ネコちゃん(有馬の愛称)、すき焼き食べよう」と大船でご馳走になったほか、横浜の洋食屋にも2回くらい連れて行ってもらいました。 私は終戦後、釜山から引き揚げてきたんです。16tの小さな船に乗り、3日かけて下関にたどり着