一般にイメージしがちな「社会学入門」書とは毛色が異なるけれども,広く人文社会科学の布置のなかに社会学という「発想」が生まれきたった由縁を示し,具体的な社会学の課題に接する入口にまで招待する,というこの本の構成は正しく「社会学入門」の書だといえるでしょう.これ,いいと思う.他の分野との位置関係で特定の学問分野の発想の独自性を理解させるほうが,学部一年生とかとっつきやすいと思う.方法論的個人主義/合理的主体モデルの社会科学(経済学とか)と対置される社会学の発想(第1部),社会学を胚胎した時代精神としてのモダニズムといった議論(第2部)を経由して「社会的に共有される意味・形式の可変性・多様性についての学問」としての社会学にいたる道筋(第3部).うまいですね.で,その「変容可能性」を予測し介入しようとする「工学的アプローチ」は社会学は苦手だと.将来の変化を予測するためには「同一不変と想定するしかな