こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。ひとむかし前までは、毎年8月に放送される戦争関連のテレビ番組といえば、戦争の悲惨さというお題目を感傷的に訴えるものばかりという印象でした。 でも最近は作り手の意識が変わってきたようです。忘れられた事実を掘り起こして伝えようとする、文化史的に価値のある番組が増えてきたのは好ましい。とくに今年は見応えのあるものが多かったです。 NHKの『あちこちのすずさん』は、『この世界の片隅に』で描かれたような戦時下の庶民生活体験談を一般から募集して紹介する企画。 私は『この世界の片隅に』の原作マンガに感銘を受けて、アニメ化される前から推してました。それまでの戦時下の生活を伝える物語は、抑圧された窮乏状態をみんなで必死に耐えました、欲しがりません勝つまでは! みたいな暗い世情を描くものがほとんどでした。ところが『この世界の……』では、戦時下でも庶民が笑ってます。日常に