いま、この人の言葉に耳を傾けるだけで、むち打たれそうな空気が世の中にはある。安田好弘 弁護士。二十二日に差し戻し控訴審判決がある山口県光市の母子殺害事件の主任弁護人だ。 被害者遺族は「(被告が)調子に乗るのは、あの弁護団のせい」と憤り、メディアの弁護団たたき も過熱した。二年前に続き、判決を直前に控えた安田氏に再び迫った。(田原牧) 事実解明が第一 この裁判は異例ずくめだ。差し戻しを命じた最高裁の判断は、過去の少年事件の死刑基準を 揺るがした。遺族の発言がこれほど報じられた例もなく、タレント弁護士がテレビで呼び掛けた 弁護団への懲戒請求は8200件を超え、銃弾付きの脅迫状まで届けられた。 物色し、言葉巧みに上がり込み、罪のない妻を姦淫し、乳児まで殺害する---。検察側が描いた 「鬼畜の所業」は1、2審では争われなかった。 だが、安田氏ら現弁護団は、当時18歳の被告に殺意