主人公は明治を代表する建築家 ――新作の『東京、はじまる』は東京駅や日本銀行の設計などで知られる建築家、辰野金吾の物語です。拝読して、「辰野金吾ってこんな人だったのか」など、驚くことが多くて。前から彼については書きたいと思っていたのですか。 門井 意識したのは10年以上前からですね。万城目学さんと近代建築についての対談をさせていただいた頃から、ずっと辰野金吾というのは気になっていまして、いずれ正面から扱わなければならない対象だとは思っておりました。ただ、ちょっと……。 その後、万城目さんとの対談がまとまったり(『ぼくらの近代建築デラックス!』)、ウィリアム・メレル・ヴォーリズを描いた『屋根をかける人』を出したり、エクスナレッジの『日本の夢の洋館』というA4判の本など近代建築関係のお仕事をしまして、ますます、日本のザ・建築家というような人である辰野金吾に正面からぶつからなきゃいけないなと思い