フジツボのあまりの美しさに思わずため息が出ることがある。先日、ある水族館からムラサキハダカエボシを譲っていただいた。丸みを帯びた体は、透明感のある薄紫色。まるでアメジストでつくった勾玉のようだ。吸い込まれそうな美しさに見とれているうちに夜が明けてしまったほどである。 「フジツボといえば、あの岩場にビッシリついている白っぽいものでは?」という声が聞こえてきそうだ。確かに、我々がよく目にする岩場のフジツボは地味で、白っぽい。だがそれは全体のほんの一部。フジツボは世界に千種を超える。色も白ばかりではなく、桃色、グレー、緑、紫、縞模様、冒頭のハダカエボシのように半透明のものもいる。大きさも数ミリから、三十センチに達する大型種まで様々。フジツボはイメージよりもずっと多様な生物なのだ。 フジツボの意外な側面はまだまだ続く。にわかに信じられないかもしれないが、フジツボは「貝」ではなく、カニやエビと同じ「