各界でご活躍されている方々に、“忘れがたい街”の思い出を綴っていただくエッセイ「あの街、この街」。第10回は、神保町のすずらん通りに構える共同書店「PASSAGE by ALL REVIEWS」を運営する由井ゆい緑郎ろくろうさんです。大量の本に囲まれた暮らしの中で感じ続けた父への葛藤、そして共闘──。本の街・神保町に創り出した唯一無二の場所と、授かった尊い命への想いを綴ってくださいました。 『子供より古書が大事と思いたい』は仏文学者の鹿島茂が1996年に上梓した、同年第12回講談社エッセイ賞受賞作。タイトルは太宰治『桜桃』の冒頭「子供より親が大事、と思いたい」をもじったものである。 仏文学者の著者が、ある時『パリの悪魔』という本に魅せられ、以来19世紀フランスの古書蒐集にいかにのめりこんだか──。古書や挿絵芸術の解説からランクづけ、店の攻略法、オークション、購入のための借金の仕方まで、貴重