ここ最近の中絶論争を見ていて、反応の9割方が、どちらの立場に立とうとも、「そんなのは当たり前だろうがヴォケ」的な反応に終始していて、どうも当を得ない。私は中絶に懐疑的だから、特に気になるのかも知れないが、具体例としては、「じゃあ、男は精子を吐き出すたびに何十億と殺してるんだ、ワロス」みたいな反応である。それ自体は何にも変化しようがないただの精子あるいはただの卵子と、受精し、着床して、細胞分裂を始め、何もしなければ出産に至る過程に入った胎児をどういう根拠で同列に扱うことができるのか、根拠があるなら聞いてみたいところである。こういうヒステリックで不合理で論理的整合性がかけらもない反応で埋め尽くされること自体が、中絶が多くは感情の問題として処理されていることを示している。 まず、現状を簡単に整理しよう。 刑法においては、中絶は原則的に禁止されている。堕胎罪規定であるが、これが殺人や傷害ではなく堕