この度、講談社学術文庫から中世イタリアの詩人ダンテ・アリギエリが著した『神曲』新訳全三巻を上梓し、完結を受けて、編集部から本の紹介の原稿依頼があったが、書き出そうとしても、からからに干上がってしまった泉のように何も湧いてこない。 そうであるのならば、本来は、文学上の父であると言ってもよい、学恩ある師、あるいは『神曲』の翻訳をしていく上で助けとなってくださったイタリアでの恩師について書くべきなのかもしれない。もちろんそう考えて、この仕事をいただいてからの十数年を振り返ってみた。けれどもぼくには、どうしても最後の最後、病院にいる父の心配をしながら、校正刷りを見返していた日々ばかりが思い出されてしまう。それにイタリア文学を志したのは、父の書棚にイタリアの作家の本があったからだ。だから、あのときに考えていたことを書いて、講談社学術文庫の『神曲』新訳の紹介とさせていただきたい。 というのも、誰の人生
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く