虫歯の治療というと、みなさんはどのようなやり方が頭に浮かぶだろうか。歯の茶色く変色した虫歯の部分をガリガリと附り、削った部分にぎめ物をする。削ると痛い場合は歯茎に麻酔の注射をする。たいていの歯科医は変色した部分が見えなくなるまできれいに歯を削る。そして、発案者のG・V・ブラックの名を採り、歯科医の間で「ブラックの法則」という名で知られている方法で、金属を詰めるためにさらに大きく削っていく。この学説は、1891年に「予防拡大の理論」として発表されて以来、歯科大学の教科書の最重要事項となったから、この名を知らない歯科医は1人もいない。虫歯の治療と言えば、結果的に大きく削らなくてはならない「ブラックの法則」が唯一絶対の治療法とされ、ほとんどの歯科医が今でも採用している。 しかし、この治療法にはきわめて重大な欠陥がある。どうしても削る部分が必要以上に大きくなり、健康なエナメル質や象牙質まで削ってし