鳩山由紀夫氏の敬語については以前からいろいろ指摘されてきたところではある。あの人がよくやる無原則な多用は敬語自体の形骸(けいがい)化をもたらすもので好ましくないこと当然だが、何しろ育ちの良いお坊ちゃまだから、つい丁寧すぎる表現が口を衝(つ)いて出てしまうのだろうと、これまでは、虫酸(むしず)が走るのを我慢してきた。 ≪総理としての矜持問われる≫ しかし、内閣総理大臣の言葉遣いともなると、話は別である。議院内閣制を採用する我が国においては、現行憲法に定められるとおり、国権の最高機関たる国会において指名された総理大臣が内閣を代表し、議案を提出し、外交関係について国会に報告し、行政各部を指揮監督することになっている。要するに首相は日本国の政治行政のトップであって、彼がへりくだるべきは天皇と諸外国の元首、それからせいぜい抽象的存在としての「国民」くらいだろう。 総理の卑屈は国家の卑屈であり、敬語の