その日、国立競技場のピッチに立った若者は、不敵とも言える表情を浮かべていた。観衆の大歓声をエネルギーとして体内に取り込んだのかのように、躍動が激しくなった。刹那(せつな)、彼はゴールへのどう猛な欲求をみなぎらせる。 しつこくマークしてくるDFの動きを、右腕で封じながら切り返すと、緩急の急激な落差で相手のバランスを崩してシュートコースを作った。敵も然る者、2人、3人が目の前に立ちふさがるが、若武者はその壁を体ごと突き破るように前へとボールを運んだ。 「止められるものなら止めてみろ」という気迫がスタジアム全体に伝わると、最後は左足のシュートでネットを揺すった。ストライカーの称号とも言える背番号9が、彼には実によく似合っていた。 第87回全国高校サッカー選手権大会、決勝。鹿児島城西の大迫勇也は10得点目を決めて1大会での最多得点記録を更新、得点王に輝いた。大迫は「ゴールはうれしかったですけ