そのとき、デモの終着点である代々木公園の野外音楽堂にいた私は、夢を見ているような錯覚にとらわれていました。 すでにたくさんの人で埋まっている会場に、それでも行進を終えた集団が続々と入ってきます。 間断なく湧き上がる「FREE TIBET」というシュプレヒコール。 いかにも東京の5月にふさわしい、清々しい青空を背景に、高々と掲げられた無数の雪山獅子旗が、風にはためいているのです。 参加者は約4200名。この種のデモとしては大規模といっていいでしょう。 そして、その圧倒的多数を占めたのは、自分たちの生活とは直接関係ない、外国における人権弾圧であるチベット問題に義憤し、あるいは諸問題に関する日中両国政府の姿勢に我慢ならずに、ネット上などの告知に応じて駆けつけた一般市民。 プラカードや団扇などの小道具も、2ちゃんねるなどネット上の有志が制作したデザインが多く用いられていました。 そうなのです。考え