教科書の常識 高校物理の教科書の「横波と縦波」の項に、次のような記述があります。「横波は固体中しか伝わらない。これは、液体や気体では媒質を横に少しずらしたとき、もとにもどそうとする力がはたらかないからである」 [注1]。 縦波・横波というと、よく耳にするのが地震のP波、S波でしょう。P波は進行方向に密度の変化が伝わる縦波で、S波は進行方向に垂直に揺れる横波です。地震波は普通、震源から上に向かって伝わるので、地表ではP波は縦揺れ、S波は横揺れとして感じられます。 教科書には、さまざまな理論や実験結果に裏付けられた「常識」が書かれています。しかし、広島工業大学の細川伸也准教授はSPring-8を使って、この常識を覆す観測結果を得ることに成功しました。つまり、横波は液体中でも伝わり、媒質を横にずらしたとき元に戻す復元力が働くことがわかったのです。 あるけど見えない もともと物質の原子構造や電子状