『G-レコ』はいろいろと画期になった作品だが、一番のそれは「故郷」をめぐるものだと思う。 富野由悠季の作品の多くは「故郷」をめぐる物語だ。 「故郷」から拒否されたものの悲劇や、「故郷」に帰還するための苦難を描いている。 富野由悠季が出身地である小田原ではなく東京に「故郷」を見出していたことは知っている方もいるだろう。 ──「故郷」へのノスタルジア。 「家族」と並んで、富野作品の中心的なテーマである。 『Gーレコ』でも「故郷」と「家族」を描くが、「故郷」の方に大きな変化があった。 主人公ベルリは「生まれ故郷」に帰還を果たすが、そこにアイデンティティを見出さない。ではどこかに「故郷」があるのだろうか。育った家だろうか。そこに重みはない。まるで「故郷」の問題などなかったようだ。「家族」の真実を悩みながらも受け入れたのとは対照的である。 「故郷」は重要ではない。「家族」の方は相変わらず重要であるに