優さんの自宅マンションから被害現場の学校が見える。「もし先生が目の前に現れたら、恐怖がよみがえり、体が凍り付いてしまうと思う」=笹井利恵子撮影 「先生は唯一絶対の存在だった」と、優さん(仮名)(26)は、当時を振り返る。 連日の猛げいこ。体罰は日常だった。顧問は「やめるやつは負け犬。先生について来れば絶対、全国大会に行けるぞ」と繰り返した。指導者として保護者らの信頼も厚かった。激しい叱責(しっせき)も「期待されている」と誇りだった。 そんな中、始まった密室の〈儀式〉。レギュラー部員6人が日替わりで呼び出された。「プライドを捨てなあかん」。床をなめろ、先生の指をくわえろ――。そして、服を脱がされるまでに発展した。 3年生で全国大会出場を果たした。「あれは私たちのためだった」と言い聞かせて卒業したが、高校、大学と進むうち、疑念が膨らんだ。 崇拝が完全に砕かれたのは20歳の時。セクハラ疑惑をただ