栃木県北部に蛇尾川(さびがわ)という伏流川がある。 僕らが隣町のゲーセンに行くときは橋を渡らずに、決まって干上がった川底の砂利道を自転車押して歩いたものだった。 その砂利道の近くに、新幹線の橋脚がかかっていた。 橋の両脇の橋脚は四角ではなく巨大な楕円形のコンクリートのかたまりで、その袂でほんのときおりだけれども薄汚い乞食を見かけることがあった。 僕はそいつのことがちょっと怖かったのだけれど、一緒にいたワタナベは平気みたいだった。ときおり石を投げつけたりしていて、正義感からじゃなくただ怖いという理由で僕は「やめろよ」なんて言っていた。 ある日、いつもの砂利道の上を自転車押して歩いていると、あの乞食がちょうど橋脚から離れていくのが見えた。ワタナベが行ってみようぜといって僕の手を引く。 橋脚の足元には乞食の持ち物だろうさまざまなものがあった。 でかいラジオ、ブラウン管のない四脚テレビ、扉のない冷