〈場所〉についての本である。 どこでもよいのだが、あるときある場所にいた、としてみよう。あたりをただぼんやり見ているかぎりでは日常的な光景が目に映るばかり。しかしさまざまに具体的なフォーカスをもって見ていけば気がつかなかった事物のつながりが見えてくる。求めよ、さらば与えられん、というわけだ。そこには一定の一般性が観察され、また多かれ少なかれ固有性が見出される。その一般性は世界の成り立ちをあらためて確認させ、その固有性はその場所特有の来歴と可能性を端的に示してくれるだろう。 ある場所のリアリティは、それを読み取るリテラシーによって豊かになるのだ。 そうしたことに触れることはとても面白いし楽しい。その面白さ自体についてはあえてつべこべ言うまでもないだろう。 実は本書は評者に『アメリカン・ボーイズ・ハンディブック』という本を思い起こさせる。20世紀初頭にアメリカでベストセラーになった少年のための
![地上の唯物論(石川初『ランドスケール・ブック──地上へのまなざし』書評)](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/2abb1d00d325336034ccb45b98096bab89f6799d/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fwww.10plus1.jp%2Fmonthly%2Fassets_c%2F2012%2F12%2F1210_ih_book%2B-thumb-500xauto-951.jpg)