「鉛筆と紙とフィルムの最後の時代に立ち会えたことは幸せだった」 アニメーション監督の宮崎駿が、アメリカ・アカデミー賞名誉賞を受賞した。この賞に輝いた1990年の黒澤明以来、2人目の快挙。「映画界への長年の貢献」が認められた格好だが、当の宮崎は会見で、「賞では何も変わらない。終わった仕事について結果をいちばんよく知っているのは自分だ」と、権威におもねらない宮崎らしい感想を述べている。 そんな宮崎に、じつはアニメ化に向けて動きながらも、泣く泣く断念してしまった作品があるという。それは、世界に知られる児童文学の定番『長くつ下のピッピ』だ。 先日、発売された『幻の「長くつ下のピッピ」』(岩波書店)によれば、『長くつ下のピッピ』(以下、『ピッピ』)のアニメ化にかかわっていたのは、宮崎のほか、宮崎の先輩であり長年のライバルでもある高畑勲、そして戦後の日本アニメ文化を支えてきたキャラクターデザイナーであ