一度でもマニタ書房に来たことがある方なら、様々に分類された本のジャンルのひとつに「やくざ」というコーナーがあるのをご存知だろう。お客様のニーズに応えるという理由はもちろんあるが、それよりも、まず店主が極道者たちにひとかたならぬ興味をもっているからだ。自分の好きな本だけ売る。それがマニタ書房の基本姿勢である。 あるとき、こんな本を仕入れてきた。ブックオフではない。場所は忘れたが、都内のどこかで開催された古書市での収穫の1冊だったと思う。 『関東やくざ者(もん)/藤田五郎』(1971年/徳間書店) 仕入れてきた本をすべて読むなんてことは不可能なので、この本もしばらくは適当に積んでおいた。そしてあるとき、気まぐれで中をパラパラめくっていて、以下のような箇所を発見した。 本文のある箇所が、極太マッキーで黒々と塗りつぶされているのだ。分量にして3行。なぜ塗りつぶされたのか? 何が書かれていたのか?