死刑囚、刑務官、被害者遺族、元法相などへのインタビューで死刑制度の全貌に迫る書籍『ルポ 死刑 法務省がひた隠す極刑のリアル』(佐藤大介著、幻冬舎新書)がたちまち3刷となり、話題を呼んでいる。 ここでは本書の一部を抜粋して紹介。刑が執行された「元死刑囚」の家族の思いとは――。 * * * 「立派な最期でした」と告げられた母の涙 棺に入った息子は、花に囲まれ、穏やかに眠っているように見えた。 「(最期に)母ちゃんの顔を見ることはできんかったね」 母は声を絞り出して語りかけた。 福岡市早良(さわら)区の福岡拘置所。その一角にある刑場で、松田幸則元死刑囚(当時39)に死刑が執行されたのは2012年9月27日だった。 報せを受けた70代後半の母は、その翌日に熊本県内から駆けつけ、拘置所内で行われた葬儀で手を合わせた。 応対した拘置所幹部は「立派な最期でした」と告げた。遺書は書かれていなかった