昭和32年刊行の、仁木悦子のデビュー作。 主人公は作者と同姓同名の仁木悦子(音大生)と、兄の雄太郎(植物学専攻の大学生)。 両親は疎開先の信州に住み着いてしまい、二人で東京に出てきて間借りして学校に通っている。 「箱崎医院」という病院の2階の部屋(入院患者用の病室)を借りることになって引っ越したら、そこで殺人が・・・という話。 本格モノです。 さて。 私が持っている仁木悦子の本はすべて文庫なので、後ろに解説がついているのだが、どの解説にも共通する特徴は、ものすごく気合が入っていることである。 この「猫は知っていた」が、日本のそれまでのミステリとどれほど違っていたか、この作品の明るさにどれだけ驚かされたか、欧米のミステリのような軽さがどんなに新鮮だったか、ということが、それぞれの解説者によって熱心に語られる。 誰もかれもが同じことを書いているのでびっくりするが、当時、それだけインパクトがあっ