正直、迷った。 こんなドキッとすることを、こんなにサラッと口にされてしまっては。 「あのタイミングで優勝してしまったこと、後悔すらありましたから、あの後……」 書いてもいいのか。 いいの? と訊けば、いいですよ、ともう一度サラッと返されるだろうことは、その場の雰囲気から、考えずとも想像できた。 「あのタイミングでの優勝」とは、もちろん、2013年夏の甲子園優勝のことだ。 当時、前橋育英高の2年生だった高橋光成投手は、未完の大器というふれ込みで甲子園入りすると、あれよあれよの快投、快進撃の末、甲子園初出場でまさかの全国制覇という大仕事をやってのけてしまった。 「自分たちの代で優勝すればよかったと思いました。優勝して、気分よく卒業していった3年生たちがズルいって……。そこまで思ってしまいましたから、自分」 ただ一生懸命投げていたら、いつのまにか「日本一」に。 『野球人』第3巻に掲載した記事「流