昨年12月、上海市内のホテルロビーに現れた張秋瓊さん(21)はそう言うと、慣れた手つきで三脚を取り出し、スマートフォンを設置した。2分で準備が整い、スタートの合図もなく生放送は始まった。 「みんな元気? じゃあ今日のファッションを紹介していくね。この黒のフレアパンツはラインがきれいで……」。画面に語りかけると、たちまち「かわいい!」「私も着たい!」などとコメントが返ってきた。 張さんは、35万人のフォロワーを有する網紅(ワンホン=ネットアイドル)だ。網紅は個性や独自のアイデアを生かし、SNSを通じて中国で爆発的な人気を誇る。生放送の配信専用アプリが、300以上もある。 1年前までは金融系会社の総務アシスタントとして働く普通のOLだった。地味な制服を着て、毎日午前9時から午後5時まで私語は禁止。疲れ切って週末を迎え、外出する意欲もなく、友達とも会わない。そんな生活に嫌気がさした頃、網紅の存在