著者は、現役のときは大蔵省きっての論客(というか外部でものをいう珍しい官僚)として知られ、膨大な著書がある(今年だけで6冊!)。どれも似たような内容なので、それを新書版でコンパクトにまとめた本書がお買い得だろう。 90年代前半まで著者は「日本型資本主義」を賞賛し、西部邁氏などと一緒になってすべての改革を否定する「真の保守主義」を標榜していた。しかし国際金融局長として為替手数料の自由化によって「日本版ビッグバン」の引き金を引いた後は「改革派」に転向し、「グローバル化に乗り遅れるな」と説くようになった。本書もその延長上で、「よいデフレ」とか「マクロ経済学は役に立たない」などの持論を展開している。 学問的には、「よいデフレ」論には異論も多い。本書の統計にも示されているように、輸入のGDP比が10%程度で、中国からの輸入はその20%だからGDPの2%である。それが「構造的デフレ」をまねいたとい
田母神前空幕長の件について、国会やマスコミ(産経を除く)ではほぼ批判一色である。 私はこの状況に不満がある。 といっても、「田母神氏の主張は正しい」「批判するほうが間違っている」と言いたいわけじゃない。 逆に、「まだまだ批判が足りない」「自衛隊幹部の政治的発言に対してもっと警戒心を持つべきだ」「世論がアレルギー反応を起こしてもいいくらいだ」と思っているのである。 私がどれほど田母神氏のようなタイプの「軍人」を忌み嫌っているかといえば、酔っ払い運転常習者を見るのと同じだといえばわかってもらえるだろうか。酔っ払い運転常習者に対して「運転する資格なし」と罵倒するのと同じく、田母神氏には「国防の要職にある資格なし」と批判せずにはいられない。 以下、この稿では自衛隊のことを「軍隊」、自衛官(いわゆる制服組)のことを「軍人」と呼ぶことがある。私自身は憲法9条2項を改正して自衛隊を軍隊として認めるべきだ
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