米国が2030年代に実現を目指す火星旅行への動きが加速している。各国の宇宙機関と共同で今年8月、新たな工程表を作成したほか、来年には宇宙船の試験飛行が始まる。ただ、片道で半年以上の長旅は、飛行士が浴びる放射線対策など多くの課題を抱えている。(草下健夫)◇ ■小惑星に足掛かり 米航空宇宙局(NASA)や宇宙航空研究開発機構(JAXA)など世界の宇宙機関で組織する「国際宇宙探査協働グループ」は8月、有人火星飛行の工程表を2年ぶりに更新した。 実現までの技術的な準備として月面探査や、月の軌道近くに小型の宇宙基地を設置して長期滞在する案に加え、NASAが今年1月に打ち出した小惑星の捕獲探査計画を新たな選択肢として盛り込んだ。工程表は国家間の正式合意ではないが、各宇宙機関はこれを念頭に研究を進める。 米国は火星飛行への足掛かりとして小惑星探査を重視。21年にも直径7~10メートルの小