「コンピューターとブラックホールの違いはなんだろう?まるでジョークみたいだが,これは今日の物理学における最も深遠な問題の1つなのだ」 こんな風に記事は始まる。そしてつい最近まで,この答えは「コンピューターは結果を出力するが,ブラックホールは出力しない」というものだった。 最新の量子情報理論によれば,半導体のチップだけでなく,あらゆる物体が計算している。石ころも,人間も,水爆も,宇宙も──。物体はそれ自身を構成する基本粒子の位置と速度によって情報を記録し,粒子が相互作用するたびにその情報を書き変える。時間がたつにつれて物体が変化するというのは,その物体が自らの構造を計算するプロセスだ。物体は何でもコンピューターなのだ。 だがもしそうだとしても,ブラックホールだけは例外だと思われていた。ブラックホールに落ち込んだ物体は2度と戻ってこず,結果が出力されないからだ。車椅子の物理学者ホーキングは70
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