量子力学は非常に成功した理論ではあるが,奇妙なパラドックスに満ちている。量子ベイズ主義(Qビズム)という最近発展したモデルは,量子論と確率論を結びつけることで,そうしたパラドックスを解消,あるいはより小さな問題にしようとする。Qビズムは量子的パラドックスの核心をなす「波動関数」を新たな概念でとらえ直す。一般に波動関数は粒子がある性質(例えばある特定の場所に存在すること)を示す確率を計算するために用いられるが,波動関数を実在とみなすと様々なパラドックスが生じてくる。Qビズムによれば,波動関数は,対象の量子系がある特定の性質を示すはずだとの個人的な「信念の度合い」を観測者が割り当てるために用いる数学的な道具にすぎない。この考え方では,波動関数は世界に実在するのではなく,個人の主観的な心の状態を反映しているだけだ。 翻訳は慶応義塾大学大学院/日本学術振興会特別研究員の杉尾一さん,監修は芝浦工業大
![Qビズム 量子力学の新解釈](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/302c20d72c2f65ac3ed86a40013f1beac9c49e3c/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fwww.nikkei-science.com%2Fwp-content%2Fuploads%2F2013%2F05%2F920ed7e7ff52bed149534a9b00058ff9.jpg)