哺乳類だけでなく鳥類でも、「オスが競争し、メスが選択する」という性戦略のちがいは広範に見られる。これはオスにとって精子をつくるコストがきわめて低く、メスにとって子どもを産み育てるコストがきわめて高いからだ。ここから、オスの最適戦略は出会ったメスと片っ端からセックスする「乱交」になり、メスの最適戦略はもっとも多くの資源(食料や安全)を提供してくれるオスの「選り好み」になる。これが進化心理学の基本で、現在までに膨大な証拠(エビデンス)が積み上げられている。 とりわけヒトの場合は、女性は受胎してから9カ月の妊娠期間があり、そのうえ出産後も数年の授乳・子育てが必要になるのだから、そのコストはすべての哺乳類のなかできわだって高い。これはつまり、「選り好み」がきびしくなるということであり、男同士の競争がはげしくなるということだ。 猿人や原人の時代からヒトのオスはヒエラルキーの頂点を目指して暴力的に争っ