「もはや先進国ではない日本は、『堕(お)ちる道を堕ちきる』ほかない――」。東京オリンピックが閉幕した。数々の不祥事に加えて、東京都の新型コロナウイルス感染者数が期間中に過去最多を記録するなど問題にまみれた大会だった。中島岳志・東京工業大教授が、日本と五輪の本当の姿を射抜き、処方箋を提示した。【聞き手・鈴木英生・オピニオングループ】 日本衰退を可視化した東京五輪 まずは、あまりに問題だらけの大会でも、全力を尽くされたアスリートの方々に、敬意を表したい。そのうえで、今やるべきではない五輪をやってしまったとしか言いようがない。せめて、あと1年延期すべきだった。今大会の反省を踏まえて、五輪のあり方は根底から問い直されねばならない。 1964年の東京大会が戦後復興と高度成長の象徴ならば、今回は日本の衰退を可視化したイベントとして語り継がれるだろう。新型コロナウイルス禍への政府の対応のまずさはもちろん