新海誠監督は以前、「ロマンチック・ラブの否定」という言葉を口にしたことがある。ロマンチック・ラブとは、恋愛対象を運命の相手と認識する社会学上の概念。新海アニメは、少なくとも『星を追う子ども』までその否定を出口にしてきた。失恋であったり、物語的な別離であったり、とにかく恋愛が成就して終わることはなかった。ヒロインを救い出した『雲のむこう、約束の場所』にしても、「あの後に待つ展開」はおそらく同じ出口を通っただろう。 風向きが変わったと感じたのは『言の葉の庭』からだ。成熟した作家の余裕があった。冷静で肯定的、それでいて否定的な部分も削ぎ落とさず、一歩引いたところから制作しているような、年輪のある作品。だから自分は新海アニメの中で『言の葉の庭』が一番好きだ。46分という中編の尺も作家に合っていると思ったし、バランスがいい。 そして3年ぶりの新作『君の名は。』が、ついに公開された。 今回は劇場長編ア