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  • 映画『オマールの壁』が映すもの(2)不毛な政治ではなく人間的な主題としてのパレスチナ問題

    映画『オマールの壁』が映すもの(1)パレスチナのラブストーリーは日人の物語でもある ※ネタばれ注意 パレスチナ映画『オマールの壁』の結末は、主人公のオマールが、自分をスパイに仕立てようとしたイスラエル秘密警察のラミ捜査官を銃で撃つというものだ。オマールがなぜ、ラミを撃ったのかは、映画の中で種明かしされるわけではない。謎解きは観客に委ねられる。 この結末の前に、この映画の人間的なドラマは終わっている。オマールとナディアのラブストーリーを縦糸とすれば、それに模様をつける横糸は、パレスチナ問題である。結末は、この映画でのパレスチナ問題に仕舞いをつけるものであり、当然のこととして、オマールとラミという「パレスチナ対イスラエル」の対比となる。 【参考記事】『オマールの壁』主演アダム・バクリに聞く パレスチナ映画であるなら、パレスチナ問題が縦糸で、パレスチナ人の若者のラブストーリーなど人間ドラマは

    映画『オマールの壁』が映すもの(2)不毛な政治ではなく人間的な主題としてのパレスチナ問題
  • 「テロとの戦い」を政治利用するエルドアンの剛腕

    イスタンブール中心部の繁華街で3月19日に起こった自爆テロの現場で献花し、祈りをささげる人々(3月20日) Osman Orsal-REUTERS トルコでテロが続いている。首都アンカラで3月13日に車爆弾によるテロがあった。少なくとも37人が死亡し、70人以上が病院に運ばれた。19日にはイスタンブール中心部の繁華街でテロがあり、少なくとも4人が死亡した。トルコは2011年以来、最悪の内戦が続くシリアと長い国境で接していながら比較的安定した国だったが、この1年で爆弾テロが続く国というイメージに大きく変わってしまった。 私は2014年春にカイロに駐在していた時、イスタンブールに行き、シリアやイラクから逃れてくる難民を取材したことがある。その当時、イスタンブールの繁華街やショッピングモールでは、湾岸諸国から来ている、いかにも富裕なアラブ人家族連れが目立った。ホテルの相場も上がっていた。エジプト

    「テロとの戦い」を政治利用するエルドアンの剛腕
  • 空爆から1年半、なぜ「今回は」ガザの復興が進まないか

    イスラエルの攻撃から1年たっても破壊の跡は残り、まだテントが立っていた(ガザ、シュジャイーヤ地区で、2015年8月) 川上泰徳撮影 先日、東京都内で、フリー・ジャーナリストで映画監督の土井敏邦さんが主宰するパレスチナ報告会「ガザ攻撃から1年半・いまパレスチナはどうなっているのか」があり、私もコメンテーターとして参加した。ガザの状況は2014年夏のイスラエルによる51日間の大規模攻撃から1年半が経過した今もなお、復興が進まず、困難が続いている。いま日テレビで取り上げられることはほとんどないが、土井さんの映画は、ガザの重要な変化を伝えている。 報告会では土井さんが昨年11月にガザ入りした時の映像を編集した『絶望の街─ガザ攻撃から15ヵ月後─』が初上映された。土井さんは2014年夏のイスラエルによるガザ攻撃の時にガザに入り、映画『ガザ攻撃 2014年夏』としてまとめた。今回の『絶望の街』はそ

    空爆から1年半、なぜ「今回は」ガザの復興が進まないか
  • 民主化か軍事化か、制裁解除後のイランの岐路(後編)

    1979年のイスラム革命から30年以上が経ち、国民の間には改革への支持が広がっているが、イスラム体制は2月の選挙でも改革派の候補者を排除しようとしている(革命を描いたテヘランの壁画) Raheb Homavandi/TIMA-REUTERS ※民主化か軍事化か、制裁解除後のイランの岐路(前編) はこちら 民衆から離れ、支配階級となった聖職者 2005年と2009年の大統領選挙に絡んでイランの政治状況を見て感じたのは、ハメネイ師は改革派と革命防衛隊の間で危うい綱渡りをしているということである。1979年のイラン革命から30年以上を経て、ハメネイ師が体現する革命原理「ヴェラーヤテ・ファギーフ(法学者による統治)」に、無理が来ているということだ。政府や行政機関でも、宗教者が責任ある地位についていることで実務やプロジェクトの障害になり、国民の間に反感が広がっていた。 2009年にイスラム聖職者を風

    民主化か軍事化か、制裁解除後のイランの岐路(後編)
  • シーア派指導者処刑はサウジの「国内対策」だった【サウジ・イラン断交(前編)】

    テヘランのサウジアラビア大使館前で、サウジによるシーア派宗教指導者ニムル・ニムル師の処刑に抗議するシーア派大国イランのデモ隊(1月2日) TIMA/Mehdi Ghasemi/ISNA-REUTERS 広がる国交断絶の波紋 サウジアラビアによるシーア派宗教指導者の処刑が、テヘランでのシーア派民衆の抗議デモにつながり、テヘランのサウジ大使館が放火されたことから、サウジはイランとの外交関係断絶を発表した。続いて、クウェートは駐イラン大使を召還、バーレーンはイラン行きの直行便を停止するなど、サウジに同調する動きを見せている。 今回のサウジ・イラン危機の根底には、中東でイランの影響力が強まることに対するサウジや湾岸諸国の反発がある。しかし、サウジの今回の集団処刑は、サウジがイランを挑発して、国交断絶に持っていこうと仕組んだものとは考えられない。 処刑を決めたのはサウジの国内治安やテロ対策を担当する

    シーア派指導者処刑はサウジの「国内対策」だった【サウジ・イラン断交(前編)】
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