この夏、韓国を旅した。日本統治からの解放を祝う「光復節」をはさみ、ひたすら歩いて感じた隣国。そこには奇妙な「反日」の空気があった。【鈴木琢磨】 少女像バスに乗せ 夕方から雨が激しくなってきた。さすがに中止だろうなと思ったら、その新人歌手は舞台に上がった。8月14日、ソウル中心部の広場で開かれた世界慰安婦デーのイベントで元慰安婦のおばあさんが歌手としてデビューしたのだ。ビニール傘の下、チマ・チョゴリ姿で懐メロ「恨(ハン)多い大同江(テドンガン)」を歌った。CDの解説を読むと、おばあさんはこう言ったという。「日本軍に引っ張られていかなければ、私は歌の仕事をしたかった」。その夢がついにかなった? 感動ドラマの演出なのかもしれないが、ため息しか出ない。 この日の朝もため息をついた。ソウル市内を少女像を乗せたバスが走るというので、初日に乗ってみようと思い立った。バス停で待つこと1時間。運転席から2番