実は、田中好子の死の直前にキャンディーズを思い出していた。というのは、例のサントリーのコマーシャルに使われている坂本九の「見上げてごらん夜の星を」が、曲の真ん中で突飛な転調をしていることに気づいて、これはキャンディーズの「哀愁のシンフォニー」の逆のパターンの転調だなと思い当たったのだ。 キャンディーズの成功した歌は、「年下の男の子」、「春一番」、「やさしい悪魔」と、ヨナ抜きないし二六抜きの音階を使っている。いずれも春に発売されたシングルだ。最後の「微笑がえし」は、ヨナ抜きではないが第四音を使っていないのでそれに準じる。これまた春に発売された。この4曲の中では、私は「やさしい悪魔」がいちばん好きで、二六抜きの短音階で始まるメロディーが、同じ音で構成されるヨナ抜き長音階*1と行ったり来たり転調しながら、最後にはヨナ抜き長音階で終わるという、吉田拓郎が凝りに凝って作った歌だ。音程の跳躍が多いため