■『あまちゃん』大ヒットの背景 2013年、小泉今日子は、宮藤官九郎が脚本を手がけた『あまちゃん』に出演しました。このドラマは、東日本大震災から立ち直ろうとする東北の人々を描き、視聴者の心をとらえました。1980年代のアイドルシーンを振り返りつつ、現代特有の「地方アイドル」を登場させた点も話題を呼びました。映画やドラマで活動を続けていたものの、ここまで一般に受けいれられる作品は、小泉今日子にとっても久しぶりです。 『あまちゃん』の大ヒットは、バブル期以降の文化の流れを背景としています。 1980年代半ば、日本人は一方で好景気に浮かれながら、「喪失の予感」にもさいなまれていました。突然手に入れた「嘘のような豊かさ」にとまどい、「こんな時代がいつまでも続くのだろうか?」と疑ったのです。当時、「世界最終戦争後のディストピア化した地球」を舞台にした漫画やアニメが流行していました(『北斗の拳』の連載