前回に登場した、ニート離脱の気配すらみせずにカウンセリングを中断した青年。当時34歳。彼が描くマンガは、少なくとも技術的にはプロ並。けれど彼は、その才能を明かしませんでした。 「趣味は?」「別に…」「やりたいことや、なりたいものは?」「…ありません」「子どもの頃の夢は?」「……」 自身の足で歩めずにいる若者はたいてい同等の反応です。「夢も希望も」語れません。そんな青年を前にするたびボクは思います。この心も親たちに夢を奪われたんだ。ほめられ不足で自信を萎えさせて育ってきたんだ。 「ただの怠け者の優しさなんて役に立ちません」 彼のお母さんにたずねたことがあります。 「彼の良いところは?」 お母さんは、ほぼ瞬時に答えました。 「おとなしくて優しいっていえばそうだけど、ただの怠け者には優しさなんて役にも立ちません。娘もいってます。男らしくない。おとなしすぎる。女々しい。割りきりがいい娘だけに、あの