小説を読んでいる時と、映画を観ている時では、脳の使い方が違う。無論こんなことは自明な事実ではあるが、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』という作品の原作と映画を見比べた時、そのような実感を顕著に持った方も多かったのではないだろうか。 原作小説を読んだことのある人間なら、あの小説が要求していたものを覚えているはずだ。ページをめくる手が止まる瞬間が何度もあった。止まって、考えた。グレースが立てた仮説の意味を、自分の頭で追いかけようとした。追いかけられないことも多々あっただろう。それでも読み続けた。そしてグレースが正しかったと判明する瞬間に、奇妙な達成感があった。自分は何もしていないのに、自分がたどり着いたような感覚があった。そんな感覚を覚えた人も多いのではないだろうか。 小説一般に言えることだが、"意味"とはテキストの中に存在するのではなく、読者が自力で構築するものだ。文字は素材に過ぎず、脳がそ

