はじめに 中国は長らく皇帝が統治を行う国家であった。王朝はしばしば代わるものの、皇帝が政治の中心となるということは古来不変であった。しかし、1912年に清朝最後の皇帝である宣統帝(愛新覚羅溥儀)が退位し、中華世界から皇帝はいなくなり [1] 、皇帝による政治は消滅した。 中国での皇帝による政治が終わってから73年後、中国の片田舎である男が皇帝として即位したという。この男の名を曾応竜という。彼は漢の武帝 [2] 、唐の太宗 [3] 、清の乾隆帝 [4] のように広大な範囲を支配したわけではない。彼が支配したのは、片田舎のごくわずかな土地で、それもごくわずかな期間であった。 中国語圏のいくつかのインターネットフォーラムで、この「皇帝」についての話が流布している。曾応竜は1985年に皇帝として即位したという。曾が建てた国の名前は「大有」であり、四川省の片田舎にあったという。県の政府を襲撃したが、