抑制した文章にするには、形容詞を追放すること。 形容詞は、ふわふわした、とか、もちもちした、とか、事物の周りに靄みたいにまとわりついた雰囲気をとらえるのが得意だから、情緒的な雰囲気を伝えるにはいいけど、事物の輪郭を伝えるときには、妨げになってくる。 昔ヘミングウェイの『老人と海』の文体について調べたときに、あらゆるシーンから形容詞が徹底的に追放されているとわかった。 例えば、綱ですりきれた手に、海の塩がしみこんで痛む様子。綱を引いてカジキを釣ろうとする老人の疲れた様子。サメの頭をオールで叩く様子。 どんなに悲惨な場面でも、形容詞をつかって大げさに盛り立てられることなく、動詞の躍動感と名詞の固体感で実直に描写されていた。 そうやって文章を最後の最後まで徹底して抑えつづけた忍耐によって、ラストシーンに物語の全ての効果が集中してカタルシスが生じる。 形容詞を追放すると、より少ない選択肢のなかでの
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