戦時下の首相であり、陸相である東條英機は、「太平洋戦争に勝つ」ことと、「敗戦」という事態をどのように受け止めていたのか。日本経済新聞がスクープした、昭和20(1945)年8月10日から14日に書かれた東條の手記にはこうある。 然(しか)るに事志と違ひ四年後の今日国際情勢は危急に立つに至りたりと雖尚(いえどもな)ほ相当の実力を保持しながら遂に其(そ)の実力を十二分に発揮するに至らず、もろくも敵の脅威に脅(おび)へ簡単に手を挙ぐるに至るが如き国政指導者及国民の無気魂なりとは夢想だもせざりし処之(これ)に基礎を置きて戦争指導に当りたる不明は開戦当時の責任者として深く其の責を感ずる処、上御一人に対し又国民に対し申訳なき限り…… (半藤一利、保阪正康、井上亮『「東京裁判」を読む』) 日本の軍事指導者たちの戦中・戦後の態度、敗戦の理由について、作家・保阪正康さんの著書『昭和史七つの謎と七大事件 戦争、