□ニューヨーク駐在編集委員・松浦肇 50万人規模とされるニューヨークのイスラム教徒を束ねるイマーム(宗教指導者)は、中東出身者が多く住む東部クイーンズ地区のシャムシィ・アリ氏である。アリ氏はインドネシア出身なのだが、前任者のイマームが2001年の米中枢同時テロについて「ユダヤ人のせいだ」と暴言を吐いて失脚したために、緊急登板した経歴の持ち主だ。柔和な性格で、他の宗教との融和主義が買われた。 アリ氏の名を広めたのは、同時テロ直後に踏み切ったユダヤ教の礼拝所、シナゴーグへの表敬訪問。イスラム教徒にとってのタブーに挑戦した。 モスクの同僚からは「選民思想の輩が集う礼拝所に入って大丈夫なのか」と心配されたそうだ。しかし、アリ氏は「3章110節にあるように、コーランは『最高の民』のためにある聖典。『選ばれし民』と『最高の民』は相性が良いよ」とユーモアで切り返した。 01年当時、米国でイスラム教徒を狙