「数学なんて勉強する人たちは、いったい何者なのだろう。」ノンフィクションの中でも、私が挫折した本数ナンバーワンは数学本である。目に見えない概念にめっぽう弱いため、数式に拒否反応が出てしまう。しかし、私のこの意見に「同感!」と思った人にこそ、是非とも読んでもらいたい一冊だ。 著者であるエドワード・フレンケル氏が数学者として自分を見出したのは、石油ガス研究所(日本でいうところの工業大学)に入学して間もないころだった。学校でもっとも尊敬される教授が声をかけてきた。「数学の問題を解いてみたいと思わないかね。」 与えられた問題は「ブレイド(組み紐)群」といって、「世界中の誰ひとりとして、まだ手に入れていないもの」であったにもかかわらず、誰も予期していなかった別の抜け道を発見し、著者は不意に答えを得ることになる。以下の文は、「わたしが数学者になった瞬間のこと」として興奮を隠せない様子が伝わってくる。